
支援活用事例
チタン合金の加工手法開発により加工時間短縮と刃具寿命延長を達成
事業者名
多摩川パーツマニュファクチャリング株式会社
事業内容
航空機産業等の機械工作、特殊工程、組立
事業者データ
- 代表者/松澤 光良
- 所在地/飯田市松尾明7584-1
- 従業員数/127名
- 連絡先/0265-48-6488
- URL/https://www.tpm-tamagawa.com/
活用した補助金・支援制度等
令和6年度航空機システム等研究開発支援事業補助金
企業の現状及び支援の経緯

航空機の部品には疲労強度、亀裂伝搬特性(亀裂の進行のしにくさ)、耐食性、軽量性に優れた材料が多く用いられ、その中でもチタン合金はこれらの要件を満たす材料として、機体やエンジン等に広く採用されています。近年、航空機は低燃費化のため、機体の軽量化が進められており、機体部品への炭素繊維強化複合材CFRPの適用化の比率が高まっています。チタン合金は耐食性や熱膨張率においてCFRPとの適合性に優れていることから需要が増大しています。一方、チタン合金は引張強度が高く、熱伝導率が低いため、加工性が悪く、切削工具寿命が短いことが課題です。そのため、切削速度を遅く設定する必要があり、加工時間が長くなる傾向があります。
当機構では同社に対し「企業内体制整備補助金」を活用した、品質検査に関する体制強化を支援させていただきましたが、今回はチタン合金に対する新加工手法を開発したいとの相談を受け、「研究開発支援補助金」の活用を提案させていただきました。
実施した支援内容
当機構では、開発費の助成を中心として新たなる加工手法の開発支援を行いました。
チタン合金の加工における課題である①工具寿命の短さ、②切削時間の長さを改善するため、従来の加工手法であるHPC(High Performance Cutting)から、新たな加工手法であるHSC(High Speed Cutting)を開発して実現しました。
新たに導入するHSCは従来と比べて著しく高い切削速度での加工となるため、常に工具負荷が一定になるパスロケーションが必要で、これに対応するため最新のソフトウェアを導入し、エンゲージ角を制御することで負荷を均一化しました。
これらにより、①工具寿命、②切削時間が改善できることを今回のサンプルの加工で確認することができました。

支援の結果及び今後の展開等

従来の加工手法であるHPCと今回開発した新加工手法HSCにより、それぞれサンプルを1台ずつ加工し、その結果を比較しました。その結果、加工時間を47.5%短縮できました。また、工具摩耗の減少により工具コストを2/3に削減できました。今後はサンプル数を増やし、加工条件の改善を行うことで、製品の増産に対応していきます。
さらに省人化や、段取り時間の短縮化、加工精度の向上、工具の使用効率の向上を見据えて5軸加工機によるHSCに取り組む予定です。
当機構の研究開発支援補助金の活用や、CAD/CAMソフトの効率的な活用に関するアドバイスもあり、短期間での新加工手法を確立できました。
担当部署
公益財団法人長野県産業振興機構 次世代産業部 航空機産業支援センター
〒395-0111 飯田市座光寺3349-1 エス・バードB棟3F
TEL 0265-49-8047 FAX 0265-49-8048
E-mail aerospace [at]nice-o.or.jp
※[at]は@に置き換えてください
支援を受けて
これまで難削材チタンの切削加工では、加工時間が長く、かつ加工刃具も欠けやすいなど大変苦労して来ました。今回支援を受け、新技術での試加工と検証を行うことができました。結果、加工時間で約47.5%の短縮、刃具に欠けもなく良好な結果でした。ご支援をとてもありがたく感じております。今後も、新しいチャレンジに取り組んでいきたいと思います。
技術部 鈴木 賢一 氏
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